MENU

個人事業主が特定商取引法(特商法)に基づく表記を作成する際の注意点

記事には一部PRが含まれることがあります

インターネットで商品やサービスを通信販売する際、表示するべき情報の一つが「特定商取引法に基づく表記」です。

ECショップ(ネットショップ)だけでなく、Squareリンク決済で販売する場合も必要となります。

個人事業主

・特定商取引法に基づく表記ってそもそも何?
・個人事業主も必要なの?
・どのような内容を記載すればいい?
・表記しないとどうなる?

このような疑問について、わかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 特定商取引法は個人事業主も関係あり!
  • 特定商取引法に基づく表記の記載事項や書き方の例
  • 違反した場合は行政処分の可能性も

※この記事は2024年11月時点の法律に基づいて作成しています。

目次

特定商取引法に基づく表記とは

特定商取引法に基づく表記とは、名前の通り、「特定商取引法」という法律に基づいて表記するものです。

特定商取引法は消費者を守るための法律

特定商取引法(正式名:特定商取引に関する法律)は、インターネット販売や訪問販売など特定の取引において、消費者が不当な勧誘や契約のトラブルに巻き込まれないよう、消費者を守るための法律です。

たとえば、インターネットを介した通信販売などでは、実際に商品を手に取ることができないため、消費者の不安を払拭するための情報公開が求められています。

事業者にとっても、トラブルを未然に防ぎ、信頼関係を築くために重要な事項です。

特定商取引法の対象となる取引

特定商取引法の名の通り、特定の商取引(商品やサービスを売買する取引のこと)についてルールを定めた法律です。

法律では以下の7種類が対象となっています。

出典:特定商取引ガイド

この法律は、特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引をいう。以下同じ。)を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

第一章 総則(第一条)より

ネット販売やリンク決済による販売は、「通信販売」に該当します。

特定商取引法は個人事業主も関係あり

特定商取引法は、法人か個人事業主かに関わらず、同じ基準で適用されます。

つまり、個人事業主であっても、消費者が安心して取引できるよう、「特定商取引法に基づく表記」を明確に表示する義務があるのです。

特定商取引法に基づく表記の記載内容

ネット販売やリンク決済などで通信販売を行う場合、特定商取引法第十一条にて、取引に関わる情報を開示することが義務付けられています。

具体的な内容は下記の通りです。

  • 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
  • 代金(対価)の支払時期、方法
  • 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  • 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
  • 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(売買契約に係る返品特約がある場合はその内容を含む。)
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
  • 事業者が外国法人又は外国に住所を有する個人であって、国内に事務所等を有する場合には、その所在場所及び電話番号
  • 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額
  • 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
  • いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
  • 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件又は提供条件
  • 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときは、その内容
  • 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
  • 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
引用:特定商取引法ガイド‐通信販売に対する規制‐1.広告の表示(法第11条)

※太字はすべての販売者が必須の項目で、他の項目は必要に応じて表示
※5行目の「契約の申込みの撤回又は解除に関する事項」とは申込みキャンセルのこと

ちなみに量が多くてわかりづらいと思ったかもしれませんが、法令の原文はもっと見づらいです。

見てみたい方は下記を開いてみてください。

特定商取引法第十一条ほか

(通信販売についての広告)
第十一条 販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。

一 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)
二 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
四 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約に係る申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
五 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合にはその内容を、第二十六条第二項の規定の適用がある場合には同項の規定に関する事項を含む。)
六 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

特定商取引に関する法律第11条より

六の「主務省令で定める事項」とは次の通りです。

(通信販売についての広告)

第二十三条 法第十一条第六号の主務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

一 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号

二 販売業者又は役務提供事業者が法人であつて、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者又は役務提供事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名

三 販売業者又は役務提供事業者が外国法人又は外国に住所を有する個人であつて、国内にその行う事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下この号、第七十一条第三号及び第百十二条第三号において「事務所等」という。)を有する場合には、当該事務所等の所在場所及び電話番号

四 法第十一条第一号に定める金銭以外に購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭があるときは、その内容及びその額

五 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容

六 磁気的方法又は光学的方法によりプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)を記録した物を販売する場合、又は電子計算機を使用する方法により映画、演劇、音楽、スポーツ、写真若しくは絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞させ、若しくは観覧させる役務を提供する場合、若しくはプログラムを電子計算機に備えられたファイルに記録し、若しくは記録させる役務を提供する場合には、当該商品又は役務を利用するために必要な電子計算機の仕様及び性能その他の必要な条件

七 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約を二回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額、契約期間その他の販売条件又は提供条件

八 前四号に掲げるもののほか商品の販売数量の制限その他の特別の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件があるときは、その内容

九 広告の表示事項の一部を表示しない場合であつて、法第十一条ただし書の書面又は電磁的記録を請求した者に当該書面又は電磁的記録に係る金銭を負担させるときは、その額

十 通信販売電子メール広告(法第十二条の三第一項第一号の通信販売電子メール広告をいう。以下同じ。)をするときは、販売業者又は役務提供事業者の電子メールアドレス

第二十四条 法第十一条本文の規定により通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、次に定めるところにより表示しなければならない。

一 商品の送料を表示するときは、金額をもつて表示すること。

二 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期は期間又は期限をもつて表示すること。

三 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(法第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)については、顧客にとつて見やすい箇所において明瞭に判読できるように表示する方法その他顧客にとつて容易に認識することができるよう表示すること。

特定商取引に関する法律施行規則第二十三条より

特定商取引法に基づく表記の記載例

特定商取引法に基づく表記は、個人事業主では、下記のような形で作成することが一般的です。

あくまで参考例ですので、特定商取引ガイド(消費者庁)などを参照して、内容はカスタマイズしてください。

Squareのサポートページなども参考にしてみてください。

項目内容
販売事業者〇〇〇〇(個人事業主の氏名または屋号)
代表責任者〇〇〇〇(個人事業主の氏名)
所在地〒123-4567 東京都〇〇区〇〇町1-2-3
電話番号03-1234-5678
※お問い合わせはメールでお願いいたします
メールアドレスexample@example.com
販売価格各商品・サービスページに記載しております
商品代金以外の必要料金消費税、送料(必要な場合)、振込手数料(銀行振込の場合)
お支払い方法クレジットカード、銀行振込、PayPalなど
お支払い時期ご注文確定後、〇〇日以内にお支払いをお願いいたします
商品引き渡し時期決済完了後、〇〇営業日以内に発送またはサービス提供を開始いたします
返品・キャンセルについて商品発送後の返品・キャンセルはお受けできません。ただし、商品に不具合があった場合には、商品到着後〇日以内にご連絡いただければ交換対応いたします
特定商取引法に基づく表記の例

どこに表示する?

特定商取引法に基づく表記は、どこに記載するかは特に決まりはありません

一般的に、ホームページ上に特定商取引法に基づく表記ページを作成し、フッターにリンクとして表示することが多いです。

専用ページを作ることで、商品ページにリンクを貼るだけで済むため簡便化できるほか、消費者にとっても商品ページがすっきりして見やすくなるというメリットがあります。

ちなみに、Squareリンク決済では、ホームページを持っていなくても商品説明欄に直接掲載することも可能です。

違反すると行政処分の可能性も

特定商取引法に基づく表記を行わないと、消費者が適切な判断をするための情報が欠けることになります。

その結果、消費者からクレームが入ったり、あなたのお店への信頼が下がったりするだけでなく、行政からの指導が入る可能性があります。

業務改善の指示(法第14条第1項)

特商法に基づく表示や消費者保護におけるルールを守らなかった場合、まず、行政機関から「業務改善の指示」が行われることがあります。

これは、違反行為を正し、消費者に安心して利用してもらえるような業務運営に改善するよう指導するもので、指示に従わない場合にはより厳しい処分が検討されます。

(指示等)
第十四条 主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第十一条、第十二条、第十二条の三(第五項を除く。)、第十二条の五、第十二条の六、第十三条第一項若しくは前条の規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、当該違反又は当該行為の是正のための措置、購入者又は役務の提供を受ける者の利益の保護を図るための措置その他の必要な措置をとるべきことを指示することができる。

一 通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約に基づく債務又は通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の解除によつて生ずる債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させること。

二 顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為として主務省令で定めるもの

三 前二号に掲げるもののほか、通信販売に関する行為であつて、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの

特定商取引に関する法律 第14条第1項より

業務停止命令(法第15条第1項前段)

業務改善の指示にも従わない、もしくは重大な違反が認められる場合、行政機関は事業者に対して2年以内の「業務停止命令」を出すことができます。

これは、一定期間にわたり事業の一部または全体の業務を停止するよう命じるもので、特に悪質なケースで適用されます。

(販売業者等に対する業務の停止等)
第十五条主務大臣は、販売業者若しくは役務提供事業者が第十一条、第十二条、第十二条の三(第五項を除く。)、第十二条の五、第十二条の六、第十三条第一項若しくは第十三条の二の規定に違反し若しくは前条第一項各号に掲げる行為をした場合において通信販売に係る取引の公正及び購入者若しくは役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同項の規定による指示に従わないときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、二年以内の期間を限り、通信販売に関する業務の全部又は一部を停止すべきことを命ずることができる。

この場合において、主務大臣は、その販売業者又は役務提供事業者が個人である場合にあつては、その者に対して、当該停止を命ずる期間と同一の期間を定めて、当該停止を命ずる範囲の業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることの禁止を併せて命ずることができる。

特定商取引に関する法律 第15条第1項より

罰則

悪質な場合、行政処分に加えて罰金や懲役刑などの刑事罰が科されることもあります。

たとえば、虚偽の表示や消費者の権利を著しく侵害する行為を行った場合などです。

違反すれば2年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はそれらの併科の対象となります。

伊丹市 特定商取引に関する法律より

※併科とは、複数の懲罰が科されること

行政処分の例

実際に行政処分を受けているケースは毎月のように起こっています。

消費者庁の特定商取引法ガイドでは、違反内容と行政処分の内容が、施行事例として公表されています。

ここでは特定商取引法第十一条に違反した例を1つご紹介しておきます。

本日、東京都は、特定商取引に関する法律に基づき、化粧品等の通信販売事業者に対し、3か月の業務の一部停止を命じ、違反行為を是正するための措置を指示しました。また、事業者の代表取締役に対し、当該停止を命じた範囲の業務を新たに開始することの禁止を命じました。
※詳細は別添のとおり

事業者の概要

  • 事業者名
    株式会社Libeiro(リベイロ)
  • 代表者
    代表取締役 佐々木雄亮
  • 所在地
    東京都中央区新川一丁目3番3号グリーンオーク茅場町7階
  • 業務内容
    化粧品及び健康食品の通信販売

※同名又は類似名の事業者と間違えないようご注意ください。

広告の特徴

  1. ネーヴェクレマ等と称する化粧品について、「サンプル」「お試し」であることを強調した広告をウェブサイトに掲載し、あたかも、「サンプル」や「お試しセット」だけを低額で購入できるかのような表示をしていたが、実際には、低額の初回商品購入後、複数回の継続購入が条件の契約の申込みとなり、消費者は結果的に高額な支払いをすることになる。
  2. 解約申出の方法について、指定する電話番号に電話をかけさせて、その電話の自動音声案内に従ってメッセージアプリ等を使用させる方法としていたにもかかわらず、その旨を消費者が容易に認識できるように表示していなかった。
  3. 申込みの最終確認画面において、入力内容の修正に関する説明や修正を行うためのボタン等を表示しないなど、契約の申込みの内容を消費者が容易に確認し及び訂正できるようにしていなかった。

消費者の方へ

  • 通信販売で、商品を購入する際は、目立つ文字や表現のみで判断せず、申込画面や最終確認画面で、契約内容や解約条件等をよく確認しましょう。
引用:特定商取引法ガイド 定期購入契約であるのに、「サンプル」「お試し」と表示するなど消費者を誤認させるような広告を行っていた通信販売事業者に3か月の業務停止命令

特定商取引法に基づく表記は、通信販売を行う個人事業主にとっても重要な義務です。

消費者に信頼される販売者であるためにも、必要な情報をしっかりと記載しておきましょう。

目次